変身
更新日:05.06.19 |
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2004年10月31日/第28回
幸せの鳥2(そして旅立ち偏)
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この夏、アルバイトと仕事で忙しいところに「子育て」が加わり毎日寝不足が続きました。ムクドリのヒナが自分の体内時計に従い毎朝5時くらいから「腹へった腹へった」とピーピー鳴きわめくので目覚ましイラズの日々。
本来は親鳥が捕ってくるミミズなどで育てられるはずのムクドリですが、毎日近所のスーパーで売っている子供用の魚肉ソーセージ(とっとこハム太郎シール付き)のみで育てていました。「こんなソーセージで大丈夫なのか?」と庭でミミズを探したりしましたが普段そこらへんのデカい石をめくれば大体いるミミズなのに必要な時にはちっともいない!
ある時、祖母が生きたミミズを捕まえてきて「さぁあげよう」としたら、大きすぎて食べられない様子…。私もミミズはそんなに得意な方ではないので動くミミズをちぎるという作業は拷問に近い、暴れるミミズと格闘しながら「スマン!」と割り箸で頭を潰して一口サイズにしてムクドリに食わせました(残されると困るので無理に1ぴき食わせた)。
昼間はバイトに行かなければならないので祖母と二人で世話をしていましたがコレがかなり面倒臭い! ヒナは45分おきくらいに腹が減るらしく家中に響き渡る声で鳴きわめき昼寝中の祖母を容赦なく叩き起す、誰かがエサをくれるまで鳴く、2〜3口食べると身震いをして15cmくらいクソを飛ばす、…などなど数え上げたらキリがないやんちゃぶり。
ムクドリの本能か「巣の中にクソはしない」という習性があるようで、絶対自分のいる洗面器の中ではフンをしないんです。必ず洗面器の外に飛ばすんです。私と祖母は「きっとコイツはクソ飛ばそうとして巣から転げ落ちたんだろう」と察しました。
1週間もするとだいぶ慣れてきて私と祖母がエサの入ったアイスのカップをもって行くと口を開けるようになりました。まだ飛べないのに必死で羽を動かして手に乗ろうとしたり…。こうなってくると「もうッ私がいないとダメなのネ」なんて母性が湧いてきます。毎日バイトから帰ると祖母に「ねぇ今日ヒナどうだった?」なんて言ったり、祖母もエサをあげる時に「おいウンコタレ!」とか「ピー助!」と呼んだりしていました。
しかしこのままで自然界に帰れるのだろうか…心配になった私は庭にムクドリを放して観察することにしました。まだ飛べないムクドリは案の定一歩も動けずにピーピー鳴くばかり、あれでは外敵に「ココにおいしそうな小鳥がいますよー」と宣伝しているも同然ではないか!
影に隠れて見守りながら「バカ! 猫に食われちゃうぞッ!」とハラハラしながら見ていたらムクドリに見つかってしまいました。
パタパタパタ…
なんとムクドリが私めがけて飛び立ったではありませんか! 「クララが立った!」のハイジの心境です。ムクドリはかなりぎこちなく飛んで私の腹にブチ当たってTシャツにしがみつきました。もう完全に人間に慣れてしまっている…、自然界に帰るのは困難かもしれない…。Tシャツにしがみついたまま見上げるヒナに「もうウチの子になっちゃう?」と呟いてみても、そうはいかないのです。ヒナは家に来てから確実に大きくなっていて、もうソーセージやミミズの時期も過ぎたのだろうか、箸でつまんでも食べなくなっていました。大人のムクドリは虫を食べるらしいのですが、どんな虫を食べるのかわからないし…。確実に別れの時期が近付いていました。
4日後、バイトが休みだった私はムクドリを連れて人気のない木の多い山道に行きました。「これで飛び立ったらお別れだからね…」心を鬼にして近くの枝にとまらせ様子をみること約10分、ムクドリは動かないでコチラを見ています。「ホラ!
仲間のところに行くんだよぅ!」と心の中で言ったその時、強い風が吹いて枝が大きく揺れムクドリが隣の木の高いところまで飛んだ。「アァッ!」大丈夫か? ムクドリはしがみつくように高い枝にとまっている。「まだ早かった!」と後悔しました。きっと自分でエサをとることも出来ない、だってあいつはソーセージしか知らないんだから!
もっと訓練してからにすれば良かった! (どうやって?)
「…!!」
呼ぼうとしてはじめて気が付いた。あいつには名前が無かったんだった…。適当に「ウンコタレ」とか「ピー助」とか言っていたが決まった名前で呼び掛けたことは無かったんだっけ…。私はムクドリに見えるようにアイスのカップや黄色の箸を振ったりしましたが戻って来ませんでした。1時間ばかりムクドリをずっと見ていましたが、ふたたび強い風が吹き、風がやんだあとムクドリはいなくなっていました。その後も心配でそのあたりをウロウロしたり夕方同じ場所を見に行ったりしましたがムクドリの姿はありませんでした。次の日も、また次の日も行きましたがいませんでした。
今ではどうしているか解りませんが、どうか生きていてくれることを祈ります。そしてまた来年の同じ時期に家の近所に来てくれることを祈っています。
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