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2003年6月17日/第14回
幸せの鳥
ちかごろ小鳥の鳴き声で目覚めることが多くなった。私の部屋の窓の真ん前、つまり隣の家の屋根の下あたりにムクドリ夫婦が巣を作り始めたからだ。日の出とともにピーチクパーチクよく解らない言葉で会話しながらせっせと枝やらワラやら持ってきて新居をこしらえているのである。「小鳥のさえずりで目が覚めるなんてステキッ!」とか最初は思っていたが、早朝5時くらいからギャ−ギャ−けたたましく鳴くからたまったもんじゃない。
鳴くだけならまだいい、問題はこの夫婦のフンだ。家のまわりに所かまわずフンを落していくので、うかうかフトンも干していられなくなった。しかし私はこのムクドリ夫婦を応援していた。なぜなら私には、このムクドリの夫婦が見知らぬ土地でがんばる若いカップルのように思えていたからだ。私は毎日窓から彼らの様子を近所のババーのように伺いながら、巣でなにか作業している時は気配を消したり、時にはパンクズを置いてみたりして、彼らに(勝手に)協力して巣の完成と子作りを応援していた。毎日のように窓の隙間から顔を出し「はやくヒナが出来ないものか」と観察していたのだから、ムクドリにしてみたらさぞかし迷惑だったことだろう。
二週間ほどたった頃だろうか、メスと思われる方が巣にこもるようになった、卵をあたためているらしい。「いよいよだッ!」私はいつもよりパンを多くまいたりしてヒナの誕生を待った。
悲劇はある朝突然に起きた。早朝、いつもとは明らかに違う叫びにも似た鳴き声で飛び起きた私は、何ごとかと窓を開けた。ムクドリの巣に何かいる、真っ黒い大きなカラスだった。ムクドリの卵を奪いにきたのだ!私は鬼の形相で「キェ〜〜〜ッ!」と奇声をあげ、ウチワやカラーバットを振り回して威嚇したが時はすでに遅かった…。
ムクドリ夫婦の巣は破壊され、愛の結晶である卵はカラスに食われてしまったようだ。ムクドリ夫婦は呆然と電線の上にとまったまま声もださずに見ていた。相手がカラスでは手が出せなかったのだろう、目の前で子供を食べられた親の悲しみはどんなものだろうか…さぞかし無念だったことだろう。ムクドリ夫婦を見あげると、二羽はしばらく壊れた巣の様子を見つめていたが、諦めたのかそのままどこかに行ってしまった。あれからムクドリのさえずりで目覚めることは無くなった。もう二度と帰ってこないのはわかっているが、もしかしたら…もしかしたらまたここでやり直してくれるかも知れない。そう思って毎日壊れた巣を見ている。
一言リンク集

虫や木の実を食べるらしいです。パンは口に合わなかったかな?
むくどり

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