変身
更新日:05.06.19 |
|
|
|
|
2003年1月15日/第4回
宝くじで悟る
|
一等前後賞合わせて3億円が当たるドリームジャンボ宝くじを2枚連番で買ってみました。一枚300円だから2枚で600円。600円と言えば、お昼代をバイトのつまみ食いで浮かせてる私にしてみたら大金です。人には
「そんな2枚くらいじゃドブに捨ててるようなもんだよ」
とか言われたけど、私はその600円で大きな夢を買ったんだから、けっして無駄ではないんだな。だって600円でランチ食べたってせいぜい30分くらいの楽しみでしょ。宝くじなら発表までの間、3億円分の夢が見られるんだから。なんておトクなんでしょう!
以下、私が宝くじ発表までの間に見た夢―― 当たったら何を買うかとかそういうことよりも、当たった瞬間からキッチリ考えよう。おそらく私は、一緒に新聞を広げているであろう家族の輪から、なるべく平生を装い、スーッっと消えて自室に入るだろう。そしてもう一度番号を見て、当たっていることを確認したら、窓を開けてガッツポーズをとるだろう。それから知らん顔をしながらも、大きくて、それでいていかにもさりげないデザインの袋をもって銀行へ行くのだろう。窓口の周りに人がいないことを確認してから、一番地味な受付嬢を選び、内緒話をするように小さな声で
「コレ、当たってるかどうか見て下さい」
とささやくのだ。
受付嬢は番号を確認した後、小さな声で
「コチラの部屋へ…」
と、別室へ案内するだろう。そして支店長から力強い声で
「おめでとうございます!」
と言われ、ついに現金3億円を受け取るのだ。やったね!
さて、ここまでで現金を手にするわけだが、そのあとの展開が夢なんて素敵な物とは全く程遠いものとなってしまったのである。おそらく私は、現金を手にした次の日からチンケなバイトなんかさっさと辞めてしまって、買い物三昧になっていることは火を見るより明らかだ。勤労意欲は消え失せ、イラストなんかどうでもよくなるのではないか? さらに、周囲の人間も、私の金遣いの荒さから、大金を持っていることに気がつき出して、なんとか金を貰おうとするのではないか?
何なんだ! 大変な地獄ではないか! そういえば以前テレビで、最近ある銀行が高額当選者向けに、大金を持ってしまった人の心理や、お金の使い方等が書いてある本を渡していると言っていた。それによると
「突然大金を手にした人は極度の興奮状態にあるので、落ち着くまで金を手にしないほうがよい」とか
「いきなり会社を辞めてはいけない」とか
「むやみに人に言ってはいけない」とか書いてあるそうだ。
さらに
「お金を手にしたとたん遊びを覚えて家に帰らなくなり一家離散した」とか
「お金を使うことが辞められなくなり莫大な借金を作ってしまった」とか
「他人に言い触らしたために周りの人間(家族までも)の態度がガラリと変り人間不信に落ち入った」等々、
今までの高額当選者が不幸になってしまった例なんかも書いてあるらしい。
いったいどうなってるんだ! すごく恐ろしい話じゃないか! もし、私が3億円手にした途端に家族や友人の態度が変ったらどうするんだ? 寝ている間に父がタンスを開けていたり、いきなり母が敬語で話してきたり、友達が猫なで声を出してきたら? 親しくも無い友達が家に遊びに来たり、会ったことも無い親戚が挨拶に来たら?
怖いのはそれだけじゃない。欲しいものは簡単に手に入り、働くことが無意味になってしまい、頑張って夢を実現するすばらしさを忘れてしまったら? これじゃ、何のために生きているのか解らなくなってしまうではないか! 嫌だ! 絶対嫌だ! 絶望だ! ひぇ〜! たのむから当たってくれるな! お金はハラ八文目で十分です! ハァ〜、ナンマンダブ、ナンマンダブ……
なんだかんだ、色々と考えてしまって、結局私は、600円で大変な悪夢を買ってしまったのでした。
|