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2004年2月28日/第23回
3種類の嘘
家を出る時お腹が痛くて更新が遅れました。稲葉早苗です。
地球上で嘘をつくことができる唯一の動物は人間です。中でも大人は上手に嘘をつくことができます。そして嘘と知っていても上手に受け入れることができるのも大人です。さらに「嘘だとバレているだろうけど言わなきゃならない嘘」を言う立場にあるのも大人です。嘘には「人を傷つけるための嘘」と「人を傷つけまいとする嘘」があります、それは『悪い嘘』と『良い嘘』に分けることが出来ます。あともうひとつ『時間短縮の嘘』を発見したので説明させていただきます。
大人は子供の質問に対し頻繁に嘘をつきます。この場合の嘘は『良い嘘』の場合が多いのですが『良い嘘』のフリをして『時間短縮の嘘』である場合が多いようです。例えば「お母さん!赤ちゃんはどうやってできるの?」の質問に対し母親は「コウノトリが運んでくるのよ」という嘘をつきます。本当は「それはお父さんとお母さんがチョメチョメして十月十日経つとココから…」などと言うのが正しいのですが、そんなことを言おうものなら子供はすかさず「チョメチョメってなに?」という次の質問を投げ掛けてきます。正直なお母さんは仕方なくお父さんとの出会い、How to making love、女体の神秘、細胞分裂の仕組み、妊娠中の注意、出産の方法など全て赤裸々に明かさなければならなくなり膨大な時間がかかってしまいます。特にHow to making loveの講議は何時間かかるか計り知れません。「まだこの子には難しいから仕方なく嘘を教える」は言い訳で「コウノトリが運んでくる」と言えば10秒程度で話がすんでしまうから嘘をつくのです。仮に「コウノトリはどこから来るの?」という質問が出たら「天国」と言えばいいのです(だいたいの子供は「天国」や「神様」、「鬼」、「おばけ」という言葉で黙ります)。
そうやって子供は10年くらいかけて「赤ちゃんはどこから来るか」の事実を探り、親の嘘を消化してゆっくり大人になってゆくのです。 私は先日テレビを見ている時、幼い頃に母につかれた嘘の真意を理解しました。「ああ、あの時の母の嘘は時間短縮の嘘だったのか…」と当時の母の年頃になってようやく消化することができたのです。大した嘘ではなかったのですが、その嘘は「母親にはじめてつかれた嘘」としてずっと心の中にあったものでした。 その嘘とは今から二十年以上前、私がまだ幼稚園児の頃でした。夕飯と食べ終わり家族とものまね番組を見ているとコロッケ(本名:滝川 広志)が千昌夫かなにかのマネをしていました。家族が爆笑する中、意味の解らなかった私は歯を剥き出しにして笑う母に「ママーあの人なんであんなことやってるの?」と質問したところ母は即答でこう答えました。

「病気よ」(子供は「病気」という言葉にも弱いです) 私はショックで黙り、笑いながら答えた母と爆笑する家族にはじめての不信感を抱きました。もしかしたらその時が「ママと自分は違う人間なのだ」という自我にめざめた瞬間だったかもしれません。母にしてみたら「今いいところだから邪魔されたくない」程度だったのでしょう。正直なお母さんなら、ものまねの説明や千昌夫の説明、その他大勢のタレントの説明を何時間もかけてしていたでしょう。二十数年たった今になって母の嘘を理解することができた私は、もしかしたらやっと大人になったのかもしれません。


一言リンク集

素晴らしいタレントさんです! 特にロボ美川憲一のネタが好きです。
コロッケワールド

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