変身
更新日:05.06.19 |
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2003年3月1日/第7回
やるべきこと
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ここ半年のあいだ私は『やるべきこと』をずっと先送りにしていた。私はある理由のため『やるべきこと』から目をそらし、ひたすら逃げ続けていた。しかしもう逃げられないところまで来てしまったのだ。鏡を見るたびに写し出された私自身が訴え続けている「もう限界だ!」と…。
何を隠そう私はこの一年間美容院に行っていない。理由は簡単、マネーが無いからである。自分の髪型がイケていないことなど半年も前から承知だった。現在私の髪型はロングのストレートで前髪はまゆ毛のあたりで揃えているのだが、後ろの髪は丁度1年前に切ったままで前髪だけ文具店で売っているコクヨのハサミでチョンチョンッと切っていたのだ、あとは適等にスキ鋏ですいて後ろは三つ編みにしたりして誤摩化していた。
ところがよくよく見ると毛先は枝毛を通り越して三つ又四つ又になっているではないか!特に朝は酷いもんである、色んなところに跳ねた髪が絡まりあいヘビのようだ。まるで妖怪ゴーゴンである。覚悟を決めた私は以前からお世話になっているお洒落なサロンに電話をかけた、カリスマ美容師とやらがそろっているサロンである、この頭を見たらなんと言うだろうか…。髪を切らなかった理由はマネーの問題だけではない、カリスマにこのゴーゴン頭を見せるのが恥ずかしかったのだ。当日私はできる限りのお洒落をしておしゃれヘアサロンに行った。
白を基調とした明るい空間、完璧に着飾り流行りの髪型をして微笑みあう美容師とお客達は妖精達の宴のように美しい。何もかもが「オマエのような妖怪が来るところでは無い!」と言っているようだ。
オロオロしながらカードを受け付けに出すと受け付けの妖精は困ったような顔をした。どうやら私のカードは古いものでカードはとっくに新しく作り替えられていたのである。しょっぱなから辱めを受けた私は真っ赤になりながら自分の順番を待った。やがて但当のイケ面今時カリスマ美容師がやってきて「随分御無沙汰でしたねーコチラへどうぞ」と椅子(処刑台)にいざなった。鏡の前に座って改めて見る己の姿のなんとみすぼらしいこと。
私「えへへ お久しぶりですぅ」(きまり悪い)
イケ面「あんまり来ないから他の店にいっちゃったかと思いましたよ」といって私のたばねた髪(ヘビ)をほどく。
私「超ロングにしたいので伸ばしてたんですよ」(ウソだ!)
イケ面「…ず ずいぶん伸びましたね…。ど どんな感じにします?」(あきらかにひいている)
私「ビビアン・スーみたいに伸ばしたいので毛先のカットだけ御願いします」
イケ面「色は? ビビアンみたいに染める?」
私「結構です!(そんな金ねーよ!よけいなことを言うな)」
その後もイケ面今時カリスマ美容師は色々な高いシャンプーやトリートメント、ヘアケア商品などを勧めてきたが。ことごとく「マツモトキヨシで買うからいいです」の一点張りで断わりなんとかカット料金だけで押さえた。カットが終わりスッキリしてとっとと帰ろうとする私に但当のイケ面今時カリスマ美容師は爽やかに言った。「お疲れ様でした。また当分お会い出来なそうなので短めに切っておきましたよ、せめて半年に一度でいいから来て下さいね!」と…。どうやら私がプアーなことを察して短く切ってくれたようだ。
ありがとうイケ面…、お金持ちになったらちょくちょく来るよ。
一言リンク集
妖怪ゴーゴンのモデルになったメデュ−サ
メデュ−サ |
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