変身
更新日:05.06.19 |
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2003年3月15日/第8回
地獄回転寿司
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先日、一人暮らしをしている妹と昼食を共にした。稲葉姉妹の好物は回転寿司である。ただの寿司ではない。回転している寿司が好きなのだ。もちろん出前の黒いおひつみたいなものに入っている寿司も好きだ。カウンターで出される高級な寿司も好きだ(ただしめったに食べられないが)。が、しかし、回転寿司のほうがはるかに好きなのだ。なぜだろう「回転寿司」と聞くと心が踊る。食べ物がベルトコンベアにのって店内を回るというその光景は、幼い頃のメリーゴーランドを思い出させ、なんとも愉快ではないか。色とりどりの寿司たちが観客の前を行進してゆくその様は、あたかもディズニーランドのエレクトリックパレードのようだ。
♪タンタラランランタンタララン
その日は新宿の回転寿司店に入った。始めて入る店だが店構えもきれいだし、まぁ大丈夫だろう。いざ店内へ。
寿司ネタは客の前を回転しているわけだから長時間回転している寿司は、なるべく避けたい。鮮度も落ちるし客の前を通過するときに客のツバなりなんなりが付着するおそれがあるではないか。私達姉妹はそこらへんは、心得ているのでカウンターの一番ハジ、つまり寿司達のスタートラインの前を陣取った。さあ何から攻めようか。と思い、エレクトリックパレードを眺めて私達姉妹は一気に食欲を失った。目の前を回るトロ(だろうか?)が変色しビーフジャーキー化しているではないか!玉子にいたっては虫が3匹も乗車している。
「こ、これは…」
私達は入っては行けない店に入ってしまった。しかも入り口から程遠いカウンターの一番奥に座ってしまったのである。何も食べずに出るわけにはいくまい。私は小さな声で隣で固まっている妹に
「ど、どうする?」
と言ってみた。妹は固まりながらも冷静に被害を最小限に押さえるよう
「回っていないネタを2〜3個食べて店を変える」
案を打ち出した。私もそれしかあるまいと思い、回っていないネタを探した。だいたいの回転寿司屋では鮮度の落ちやすい貝類は注文するようになっている。しかたない、ここでは貝を2〜3個飲み込んで帰るとしよう。店内には私達の他に客が5〜6人いたが、こいつらはきっと干物がのった寿司が好きなのだろう。そうだ! きっとこの店は刺身ののった寿司が出てくる店では無く、干物(ジャーキー)をのせた酢飯を出す店だったんだ。そうにちがいない!じゃなかったら虫を食べさせるゲテモノの店だ。私達は間違えたのだ!
そんなことを考えながら奥にいるであろうゲテモノ握りの職人に
「すいませーん! 赤貝!」
と注文した。あとは適当に火の通してあるネタと、酢で殺菌してある、しめ鯖かなんかを頼んで帰ろう、と思っていると、奥から
「オマタセシアシタ〜。アカガイデ〜ス」
とイラン人らしき職人が寿司をもって出てきた。絶望だ。すし屋に外人の職人をおくな! イラン人が悪いのではない。どんなものにもミスマッチってものがあるだろうが!
ちなみに2軒目もジャーキー屋だった。この日私達姉妹は殺菌済みしめ鯖ばかりを食べたのだ。
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