変身
更新日:05.06.19 |
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2003年5月1日
/第11回
哀しい嘘
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嘘はけっして良いものではない。しかし、どうしてもつかなければならない時もあるのだ。例えその嘘が自分のプライドを傷つける結果になったとしても…。
私はある利益のために嘘をついた。それはスーパーの野菜売り場での出来ごとだ。きのこコーナーのカセットデッキからきのこのCMで流れている『きのこの唄』なるものが流れていた。可愛らしいきのこのキャラクターが曲に合わせて踊ったりする話題のCMソングだ。フト前を歩いている子供を見ると、そのキャラクターのシールを持っているでは無いか!これはゲッツだ!!私はきのこ売り場に近付いて現場の様子をうかがった。どうやらキャンペーンをやっているようで割烹着姿のおばちゃんがきのこを炒めながら子供にシールを渡している。私はいかにもきのこを選んでいるフリをしながらおばちゃんに近付いた。
おばちゃん「今日はブナシメジが特価ですよ!どうですか?」
私「そ そうですね…。エリンギもいいなぁ〜」(シールを凝視)
おばちゃん「そうそう!炒めるとおいしいわよ!」
私「あ あれぇ!そのシールいただけるンですかぁ?」(芝居)
おばちゃん「ええ!お子さん何人いらっしゃる?」
ガ−−−−−−ン!
歳より若く見られるワタクシに「お子さん何人いらっしゃる?」だと?26の時に未成年に間違われたこのワタクシに「お子さん何人いらっしゃる?」だと?これまでの人生で歳より上に見られたことがないワタクシに「お子さん何…(以下略)
私「お菓子売り場に三人います!」(キッパリ)
…そう、私はシールが欲しいがために「子供が三人います!」と言い放ったのだ。おばちゃんは6枚もシールをくれた。27歳という年令は子供が三人いてもおかしく無い年令ではあるが、去年の暮に未成年に間違われた栄光にひたっていた私にはショックが大きすぎた。私は自分を嘲り「最近老けたもんな、ハハハ…」と笑いながら西川きよしの『子供が三人おりますねん』を口ずさみスーパーを後にするのだった。
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